林動物病院

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# 114 : 犬の股関節脱臼整復術(トグルロッド法)およびアキレス腱断裂整復術 / 【17歳トイプードルの複合的な後肢外傷】

17歳のトイプードルが、抱っこ中の転倒をきっかけに右後肢を強く痛めたとのことで来院されました。

検査の結果、右後肢には股関節脱臼とアキレス腱(総踵骨腱)断裂が疑われる重度の損傷が認められました。

高齢で心臓にも持病があったため、できる限り麻酔時間と身体への負担を少なくすることを最優先に治療計画を立てました。

股関節脱臼

レントゲン検査では、右大腿骨頭が寛骨臼から大きく外れた股関節脱臼(赤丸)が確認されました。

踵骨ー脛骨間 K-wire固定による足根関節一時固定術・股関節脱臼整復術

まず全身麻酔下で、用手的に大腿骨頭を寛骨臼内へ整復しました。

この時点では、麻酔時間を短縮するため、股関節にはインプラントによる固定を行わず、整復のみとしました。

アキレス腱損傷に対する足根関節の一時固定

同時に、右足根関節には著しい過屈曲が認められ、アキレス腱(総踵骨腱)の重度損傷が疑われました。

そこで、損傷した後肢を安定させるため、踵骨から脛骨に向けて2本のK-wireを挿入し、足根関節を一時的に固定しました。

この方法により、足根関節が過度に屈曲することを防ぎ、後肢を安定した位置で維持します。

股関節の再脱臼

しかしその後、いったん整復した右股関節が再び脱臼しました。

この子は股関節が正常な位置に入っているとしっかり立つことができたため、大腿骨頭を切除するのではなく、できるだけ本来の股関節を温存することを目標に再手術を行いました。

股関節脱臼整復術(トグルロッド法)

今回はトグルロッド法という術式を選択しました。

トグルロッド法では、骨盤の寛骨臼と大腿骨に骨孔を作製し、強度の高い糸とトグルロッドを用いて、断裂した大腿骨頭靱帯の代わりとなる構造を作ります。

これにより、大腿骨頭を寛骨臼内に保持しながら、股関節そのものの動きを残すことができます。

術後のレントゲンでは、大腿骨頭が寛骨臼内に良好に整復されていることが確認できました。また、足根関節に入れていたK-wireについては、高齢犬で長期間関節を固定することで起こる関節拘縮や筋萎縮をできるだけ避けるため、通常よりも早い時期に抜去しました。

術後経過

トグルロッド法による手術後は3日間入院し、疼痛管理を行いながら慎重に経過を観察しました。

状態が安定したため退院となりましたが、手術から5日後、飼い主さんから「自宅で歩くことができました」と、とても嬉しいご連絡をいただきました。

まとめ

17歳という高齢で、さらに股関節と足根関節の両方に大きな外傷を負った症例でしたが、できるだけ本来の関節を残し、身体への負担を抑えながら治療を行うことで、再び自分の足で歩くところまで回復することができました。

高齢の動物では、「年齢が高いから手術はできない」と一律に判断するのではなく、全身状態、麻酔リスク、手術によって得られるメリット、術後の生活の質(QOL)を総合的に考え、その子に合った治療法を選択することが大切です。

 

獣医師:林 敬明

本内容は2026年9月時点の情報です