# 97 : 犬の膀胱-前立腺-尿道 一括切除術 / 【前立腺の移行上皮癌】
今回ご紹介するのは、13歳の去勢雄の犬です。
このワンちゃんは、血尿を主訴に来院されました。
エコ―検査を行ったところ、前立腺が腫大(黄丸)してることがわかりました。去勢済みの犬の前立腺が腫大しているのは感染か腫瘍が考えらます。様々な検査を行った結果、前立腺にできた癌という事が判明しました。
前立腺にできる癌は、進行が早く、周囲の組織に広がりやすいという特徴があります。
飼主さんと相談した結果外科手術をさせて頂く事になりました。
膀胱-前立腺-尿道 一括切除 + 尿管-包皮瘻造設術
癌の広がり具合を考慮し、今回の手術は膀胱-前立腺-尿道の一括切除を行う大がかりな外科手術を行いました。
これは、腫瘍が前立腺から膀胱や尿道にまで及んでいる事を考慮して、癌を可能な限り取り除くための処置です。
まずは会陰部までの陰茎と尿道(黄丸)を剥離しました。
前立腺の全貌をしっかり把握するために、一時的に骨盤の一部を切ってアプローチしていきます。写真では、手術後に骨盤を元の位置にしっかり戻すために、ワイヤーを通すための穴をあらかじめ開けている様子が写っています。
通常、尿は腎臓で作られ、尿管を通って膀胱に入り、尿道から排出されます。しかし、今回は膀胱や尿道をすべて切除しているため、新しい尿の出口を作る必要がありました。そのため、左右の尿管の出口をペニスの先にある包皮の部分に直接つなげる手術(尿管-包皮瘻造設術《黄矢印》)を行いました。これにより、腎臓で作られた尿が体外に出られるようになります。
摘出した膀胱・前立腺・尿道・陰茎です。
病理検査の結果は前立腺にできた移行上皮癌でした。癌は膀胱と尿道にも広がっていました。
まとめ
前立腺癌は進行が早く、周囲の組織に浸潤しやすいため、早期発見・早期治療が重要です。
今回のような膀胱-前立腺-尿道の一括切除および尿管の再建手術は高度な外科手術となりますが、適切に実施することで、がんの進行を抑え、QOL(生活の質)を保つことが可能です。
獣医師:林 敬明
この内容は2025年5月時点の情報です。
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