林動物病院

〒411-0816 静岡県三島市梅名97-5

# 104 : 猫の左肺後葉全摘出手術 / 【胸水を伴った猫の肺腺癌】

16歳の猫ちゃんが呼吸が苦しそうという主訴で来院されました。

来院時には浅く速い呼吸が目立ち、胸部レントゲン検査で多量の胸水を確認しました。

さらにエコー検査では、胸水に加えて左肺の後葉に腫瘤(マス)が認められました。

胸水の抜去と同時に、腫瘤に穿刺して細胞診検査を行ったところ、

「肺腺癌」という診断が得られました。

肺腺癌は猫では稀で、進行が早く、文献上は手術を行っても平均生存期間が4日と記されている報告もあります。

しかし、この子は毎日胸水が溜まり、呼吸が苦しそうな状態が続いていたため、飼い主さんと話し合った結果、症状の改善のために外科的切除を選択しました。

左肺後葉切除術

アプローチは肋間開胸で行い、腫瘤を含む左肺後葉を胸腔外へ誘導し全摘出しました。

摘出した肺です

胸腔ドレーンを留置し、術後管理へ移行しました。

術後経過

術後は翌日からしっかり食欲が戻り, 呼吸状態も安定。

痛みのコントロール、胸腔管理も良好で、順調に回復し無事退院しました。

現在は抗がん剤治療(化学療法)を継続しており、

術後1ヶ月以上経過した現在も、食欲・元気ともにとても良好に維持できています。

まとめ

  • 肺腺癌は発見時には進行していることが多く、胸水が溜まると呼吸が非常に苦しくなります。
  • 今回のように胸水による呼吸困難が強い場合、外科手術が状態改善に大きく役立つことがあります。
  • 抗がん剤と組み合わせることで、生活の質(QOL)を高く保ったまま過ごせる期間をしっかり確保できる可能性があります。
  • 呼吸が苦しそう、息が速いなどの症状は緊急性が高いため、早めの検査がとても大切です。

 

獣医師:林 敬明

この内容は2025年11月時点の情報です