林動物病院

〒411-0816 静岡県三島市梅名97-5

# 12 内視鏡で胃の組織球性肉腫と診断した犬の症例

今回の症例は、嘔吐と食欲不振で来院した12歳9カ月 未去勢のウェルシュ・コーギーです。

血液検査は全て基準値内と特に問題はありませんでした。

腹部の超音波検査で、胃壁が11.9mmと重度に肥厚(赤線)している部位が認められました。正常な犬の胃壁は2~5mmなので、正常の2倍以上の厚さがあります。

肥厚した胃壁の原因を調べていきます。

 

内視鏡検査を行いました。

肥厚した部位の組織生検を行い病理検査に依頼しました。

 

病理検査の結果は、悪性腫瘍の組織球性肉腫と診断されました。

 

組織球性肉腫とは

組織球性肉腫はバーニーズ・マウンテン・ドック、レトリーバー、ロットワイラーに発症の多い癌の一種です。

組織球肉腫は極めて性質が悪い悪性の腫瘍(がん)で、進行が早く、転移もしやすいため予後も悪く、手術や抗癌剤、放射線など積極的治療を受けても生存期間は数ヶ月というケースが多い腫瘍です。

 

今回の治療

治療は有効性が証明されているロムスチン(CCNU)【国内未販売】を使用する事にしました。副作用が問題なければ、3週間毎の投与になります。今回の症例は2回目の投与後に胃腸障害の副作用が強く出たため、ロムスチンと似たニムスチン(ACNU)の静脈投与に切り替えました。

現在までに抗がん剤は3週間毎、合計6回投与を行っています。

食欲が戻り、減少した体重も元に戻ってくれました。飼い主さんには「本当に癌なの?」と質問される程に調子が良くなりました。

また抗がん剤以外の治療として、副作用がほとんどない、ドイツの医療のホモトキシコロジーも併用する事にしました。

今回は腫瘍のレメディーの『Galium-comp-Heel』と『Lymphomyosot drops』の内服薬を使用しています。

 


消化器の病気は、今回のように血液検査では異常を示さない場合もあります。

『血液検査で異常がないから大丈夫。』ではなく、一歩踏み込んだ検査が診断の決め手になることもあります。

一過性の嘔吐ではなく、繰り返し嘔吐が認められる場合は病気の可能性がありますので受診が勧められます。

 

 

 

獣医師:林 敬明