林動物病院

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# 15: 犬の胆嚢摘出術・十二指腸切開術 / 【黄疸】胆石による総胆管閉塞

2、3日前からの食欲不振と尿の色が濃く、黄疸があるとの事で11歳のチワワが来院されました。

診察をしてみると、飼い主さんがおっしゃる通り、眼球の色や皮膚の色が黄色く黄疸がありました。

血液検査では肝臓、胆管系の数値が高値で、特にビリルビンが20.3(基準値は0.9以下)とかなり高い値です。

腹部の超音波検査では胆嚢(赤丸)内に高エコー状の物質が多数存在し、総胆管の拡張も認められた為、胆石による総胆管の閉塞性黄疸を疑い開腹手術を行う事になりました。

外科手術

剪毛をしてみると、より黄疸が目立ちます。

開腹をして、胆嚢(青矢印)・胆嚢管・総胆管を注意深く観察していくと、やはり総胆管に胆石が詰まっていました。

※人差し指と黄色矢印の先にある黒い物体が黄疸の原因になっている胆石です。

胆嚢を切開し、胆嚢からカテーテルを挿入し総胆管の胆石を十二指腸に流す処置をしましたが胆石はしっかりとはまっていて解除できませんでした。

その為、十二指腸を切開し、総胆管の開口部からカテーテルを逆行性に入れていくことにしました。

十二指腸を切開しました。棒の先に総胆管の開口部があります。

総胆管の開口部にカテーテルを挿入していきます。

挿入したカテーテル(青矢印)から生理食塩水をフラッシュしたところ、総胆管内に閉塞していた胆石は胆嚢から摘出することが出来ました。

切開した十二指腸を縫合(下記写真)し、胆嚢を摘出して今回の手術は終了です。

摘出した胆嚢(左)と胆石(右)です。

今回のように通常の胆嚢摘出手術のみでの対応が困難な場合では、術式が複雑になり合併症になる確率も上がります。しかし今回の症例は術後2日目で自分から食事を取れるようになり、術前に20以上あったビリルビンの値も術後2日目には3.1、術後5日目には1.7と順調に下がってくれました。術後の経過はとても良く、無事に退院してくれました。

 

まとめ

犬の胆石の成分は人で多いコレステロール結石は少なく、ビリルビンカルシウムなどの結石が多いです。

胆石により胆嚢炎や胆嚢破裂などを起こす可能性があるので、胆嚢を摘出する事がありますが、無症状の場合は様子を見ながら経過観察をすることが多いです。

今回のように総胆管の閉塞や、胆嚢破裂を起こすと命にかかわる場合があります。なんらかの症状が出た場合はご相談下さい。

 

 

獣医師:林 敬明