林動物病院

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# 17 : 大腿骨頭切除術 / 大腿骨頭壊死症(レッグ・ペルテス病)

今回から今年度(2022年)に実施した手術の話です。

昨年は年間300件以上の手術がありました。平均で1日1件以上手術した計算になります。

手術データをまとめていると、鮮明に思い出す手術が何例もありました。

 

今年は整形外科手術の話から始めます。

今回はレッグ・ペルテス病(大腿骨頭壊死症)に対しての大腿骨頭切除術の話です。

レッグ・ペルテス病(大腿骨頭壊死症)の説明に関しては『こちら』をクリックして下さい。

 

今回の症例はチワワとポメラニアンのミックスの7ヶ月齢です。

診察ではなく、トリミングで来られた際に、飼い主さんから「寝起きに左足を上げる事がある」との稟告があり診察をさせて頂きました。触診では健康な右足に比べて左足の筋肉の萎縮がありました。さらに触診をしていくとペルテス病を疑う所見が認められたため、レントゲン検査を実施させて頂きました。

 

レントゲン検査の写真です。左の骨頭(赤丸)の不透過性の亢進、骨頭の平坦化、大腿骨頸部の肥厚が認められます。レッグペルテス病を疑う所見です。

左足は痛みから日常生活であまり負荷をかけずに生活をしていたのでしょう。左大腿の筋肉の太さが右に比べてかなり細いのがわかります。

レッグペルテス病と診断し、外科手術で大腿骨頭切除術を行わせて頂く事になりました。

 

大腿骨頭切除術

整形外科手術は軟部外科手術よりさらに感染に気を付けます。しっかりと剪毛・消毒し、消毒剤が入ったフィルムドレープを使用し手術を行っていきます。

大腿骨頭を脱臼させ、切除線を決めて電気鋸で切除していきます。

骨頭の切除後に切断面をトリミングする予定でしたが、今回の切除面と切除縁はとても滑らで綺麗だったため、円滑にする作業は必要ありませんでした。

 

切除した骨頭です。

骨が壊死を起こして脆くなっていたので、骨頭を鉗子で挟んだだけで骨が崩れてしまいました。(緑矢印部位)

断面(ピンク矢印)は電気鋸を使用しているので、とれも滑らかに切断されています。

 

術後10日目に抜糸で来院された際に、飼い主さんから「お散歩に行くと4本足をついて走っています」と嬉しい話が聞けました。

活発な子は治癒も早いです。

 

切除した骨頭を病理検査に提出した結果、診断名は【大腿骨頭壊死症】でした。また壊死領域は完全に切除されているとのコメントでした。

壊死部の取り残しがあると痛みは続いてしまいます。完全切除出来ているので、この子は痛みからは完全に開放されます。

今後、大好きなお散歩で思いっきり走り回って欲しいです。

 


まとめ

大腿骨頭壊死症(レッグペルテス病)はトイ種や小型犬に多くみられる疾患です。
発症率が最も高いのが生後6~7ヶ月です。

症状は負重性の跛行が認められ、徐々に悪化していきます。進行すると痛い足を挙上して歩く事もあります。

小型犬に多い膝蓋骨内方脱臼や前十字靭帯断裂などでも同様の症状を示すので鑑別が重要です。

歩き方がおかしい・お姉さん座りをする・重心が片方に寄っている・足を挙げる事がある。などの症状がないか注意して愛犬を観察してあげて下さい。

 

 

 

 

獣医師:林 敬明