# 20 : 犬の下顎骨片側全切除術 / 【口腔内の悪性黒色腫(メラノーマ)】
今回は犬の口腔内にできた、悪性黒色腫(メラノーマ)に対して下顎骨の片側全切除を行った症例です。
犬の口腔内は比較的、腫瘍ができやすい場所です。腫瘍の中には、良性の腫瘍と悪性の腫瘍【癌】があります。
口腔内にできる良性の腫瘍としては、線維腫性エプリスや骨形成性エプリスなどがあります。口腔内の悪性腫瘍【癌】では、悪性黒色腫、扁平上皮癌、線維肉腫の3つがほとんどを占めます。この3つの腫瘍に共通しているのは、どれも悪性度が高く治療が困難になる事が多いです。
この癌に対する治療のベースは外科手術と放射線治療です。それに加えて化学療法(抗がん剤)があります。
外科手術では腫瘍が浸潤している可能性があるので、広範囲な摘出手術になります。
下顎骨片側全切除術
今回の症例は12歳のミニチュアシュナウザー避妊済雌です。
症状は流涎の増加から始まり、腫瘍からの出血です
腫瘍からの出血が多く、貧血をしていたため、輸血を行いながらの手術でした。
今回の癌は右下顎の根本(黄丸部位)にあります。外側の粘膜を切開して右の下顎骨(黒矢印)が露出されてきました。
左の下顎骨と離断していきます。
次は内側の筋肉を分割、離断していきます。大事な下顎動脈があるので注意しながら進めていきます。
下顎動脈を結紮し、顎関節を外し、下顎骨を取り除きます。『黄丸が腫瘍です。』
右の下顎骨を完全に切除しました。
頬の粘膜と舌下の粘膜を縫合していいきます。
術後の写真です。
飼い主さんは、下顎骨の半分を切除するので見た目をとても心配します。
しかし口唇形成術を行っているため、術後に舌が口腔から出る事もなく、ほどんど違和感がありません。
術後1か月後にはどちらの顎を切除したかわからないほどの外見でした。
口を多く開けると縫合部の裂開を起こす可能性があるので、2週間は頚部に設置しているチューブから食事を与えて頂きました。
切除した下顎骨と腫瘍です。
悪性黒色腫は転移率が非常に高く、進行も早い癌ですが、今回の症例は術後に抗がん剤を使用し、その後の再発は認められず、長期にわたり高いQOL『生活の質』を維持しました。
まとめ
口腔内の癌は悪性度が高く、治療も困難です。口の臭いが気になる・口から出血している・ヨダレが多くなった・最近食べにくそう・などの症状が見られる場合は早めに受診して下さい。
獣医師:林 敬明
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