# 21 : 猫の喉頭リンパ腫 / 【猫の呼吸困難】
今回の症例は猫の喉頭部にできたリンパ腫の症例です。
症例は8歳の猫ちゃんです。呼吸が苦しそうとの事で来院されました。
診察時に強いストライダー(吸気時喘鳴)が認められた為、頚部のレントゲン検査を行いました。
喉頭部に腫瘍(赤丸)を疑う陰影が認められました。
腫瘤を精査するために、鎮静下で喉頭部を確認しました。
すると、喉頭蓋(嚥下時に気管に蓋をする役割)の根本右下に直径15~20mm程の腫瘤(水色矢印)が確認されます。
気管の入り口をほぼ塞ぐ形で腫瘤が存在していたので、気道開存と検査材料採取を目的として、電気メスで可能な限り切除(黄矢印)を行いました。処置後は全く見えなかった気管の開口部(黒矢印)が目視で確認出来るようになりました。
検査の結果は、悪性度の高いリンパ腫【癌】でした。
腫瘤の切除後は呼吸が楽になりました。しかし1週間程度でまた呼吸困難な状態に陥ってしまいました。
飼い主さんと相談した結果、リンパ腫の治療として抗がん剤を使用する事になりました。
第1週目の抗がん剤治療で呼吸の改善が認められました。
第2週目の抗がん剤治療ではかすれながらも声が出るようになりました。
今週、第3週目の抗がん剤治療を行い、鳴き声は以前と同じになりました。
今現在、治療から9ヶ月以上が経過しましたが、呼吸は落ち着いたまま病気以前と同じような生活を送っているそうです。
リンパ腫は抗がん剤によく反応してくれる腫瘍です。
下の写真は治療を開始して1年2か月が経過した喉頭(黄丸)です。見た目では腫瘍がなくとても良い状態です。
診断してから1年半以上が経過していますが、とても元気に過ごしています。
これからもこの良い時間が1日でも長く続くように治療をしていきたいと思います。
まとめ
猫の喉頭腫瘍は稀な疾患です。しかし喉頭にできた腫瘍はほとんどが悪性腫瘍【癌】です。
猫の喉頭腫瘍はリンパ腫が最も多く、その他に扁平上皮癌や腺癌などの報告もされています。
切除が基本ですが、リンパ腫は放射線治療や化学療法がよく効く腫瘍です。
喉頭腫瘍の症状としては、鳴き声の変化・喘鳴音・呼吸困難・嚥下困難・発咳などがあります。
上記の症状が見られたり、徐々に進行・悪化する場合は何らかの問題が潜んでいる可能性があるので、動物病院を受診する事が勧められます。
獣医師:林 敬明
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