# 25 : 犬の子宮蓄膿症 / 【未避妊の多飲多尿には要注意】
犬の子宮蓄膿症とは「子宮内に膿が貯留した疾患」です。
子宮蓄膿症には、2つのパターンがあります。
①【開放性】:子宮に溜まった膿が外陰部から排膿されます。
開放性の場合はワンちゃんが外陰部を舐めていたり、外陰部からの排膿を確認できる事で飼い主さんが気づきやすいです。
②【閉鎖性】:子宮頸管が収縮し、子宮内の膿が排膿されずにどんどん溜まっていきます。
外陰部からの排膿がないため、飼い主さんが気付きにくいうえに、子宮破裂などの重篤な状況になりやすいです。
子宮蓄膿症[閉鎖性]の手術写真です。(黄色矢印が子宮)
子宮(黄矢印)内に膿がパンパンに溜まっている状態です。この子宮が破裂したりすると敗血性腹膜炎を起こします。病態が進行すると、全身性炎症反応症候群(SIRS)や播種性血管内凝固(DIC)などを起こし死んでしまう病気です。
原因
子宮蓄膿症は中年齢(平均8~10歳齢)の未避妊雌に頻繁に認められます。
子宮蓄膿症の多くが発情出血開始後1~2か月ころに発症します。この時期は子宮頸部が緩み、また子宮内の免疫が低下する事によって細菌感染を起こしやすく子宮蓄膿症になります。
症状
一般的な症状として、多尿、元気消失、嘔吐、食欲不振、外陰部からの滲出物、腹部圧痛などがあります。
治療
治療は外科治療と内科治療があります。
1番の治療は外科的に卵巣と子宮を摘出する事です。一般的に外科手術後は良好ですが、子宮破裂による敗血性腹膜炎や、全身性炎症反応症候群(SIRS)、播種性血管内凝固(DIC)などを起こしていると周術期のリスクが上がります。
妊娠の希望、高齢や麻酔のリスクを考え、どうしても手術を望まれない場合は内科治療を行う事もあります。子宮を収縮させ排膿を促したり、抗生剤の投与を行いますが、治療の効果の発現まで時間がかかる事や再発のリスクもあるため、なるべく手術を選択します。
まとめ
子宮蓄膿症の予防は避妊手術を行っていれば可能です。
繁殖や特別な理由がないのであれば、1歳未満(生後6~7か月齢)の避妊手術が勧められます。適切な時期の避妊手術は子宮蓄膿症だけでなく、乳腺腫瘍の発生率の低下にも繋がります。
たとえ1歳を過ぎていても、先述したように中年齢で子宮蓄膿症になる可能性が高いので、健康時に避妊手術をしてあげる事が良いと思います。
獣医師:林 敬明
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