# 26 : 猫の子宮蓄膿症 / 【未避妊の腹部膨満に要注意】
前回は犬の子宮蓄膿症について説明しましたが、今回は猫の子宮蓄膿症について説明します。
猫の子宮蓄膿症も犬と同様に「子宮内に膿が貯留した疾患」です。
犬同様、猫の子宮蓄膿症にも2つのパターンがあり、外陰部から膿が認められるのが『開放性』、子宮頸管が収縮し、排膿が出来ないものを『閉鎖性』と呼びます。 閉鎖性の方が重症化しやすく危険です。
原因
犬と違い、猫での子宮蓄膿症の発生率は高くありません。
その理由として、子宮蓄膿症の原因には「黄体ホルモン」が関係しています。
この黄体ホルモンですが、排卵後に上昇します。犬は定期的に発情が来て排卵をしますが、猫は「交尾排卵動物』なので、基本的に交尾刺激がない限り排卵はしません。(※なんらかの原因で自然排卵する猫もいます。)
その為、犬より排卵回数が少なく、黄体期の回数自体が少ないので子宮蓄膿症になる確率が低いです。
症状
症状としては、膣からの排膿、食欲不振、腹部膨満、脱水、元気消失などがあります。
犬では多飲多尿が70%以上で認められますが、猫では10%程度しか認められません。この多飲多尿が少ないのも犬と猫で異なる点です。
治療
外科治療と内科治療があります。
外科手術により、卵巣と子宮を摘出することで、ほとんどの症例で良好に回復してくれます。また再発のリスクも防げます。
内科治療は犬と違い治癒後の再発率が低いというメリットはあります。しかし内科治療の条件として【開放性】子宮蓄膿症である事。(※【閉鎖性】子宮蓄膿症に対しては薬剤の効果が不明)また加齢とともに再発のリスクは高まるため、理想は外科的に摘出する選択をします。
子宮蓄膿症の手術により摘出した卵巣と子宮です。
通常の子宮は箸の先端ほどの太さです。しかしこの子宮は蓄膿によりパンパンに膨れています。
子宮の一部を切開してみると中から膿が出てきました。
今回の症例も手術の翌日から食欲が出て順調に回復してくれました。
しかし、このように蓄膿した子宮がお腹の中で破裂をした場合、手術を行っても予後が悪い事があります。
まとめ
猫ちゃんの子宮蓄膿症は犬ほど発生頻度は高くはありませんが命に関わる疾患です。
この子宮蓄膿症は避妊手術を行う事で予防する事ができます。
適切な時期の避妊手術は乳腺腫瘍の発生率を下げる事も出来ます。
猫ちゃんの乳腺腫瘍は85~95%が悪性のガンです。
そのため、繁殖を希望されない場合は、適切な時期に避妊手術を行う事が推奨されます。
当院では生後6ヶ月での避妊手術を勧めています。
獣医師:林 敬明
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