# 46 : 橈骨尺骨骨折整復術 / 【小型犬で多い前足の骨折】
最近は小型犬の中でも、特に小柄なワンちゃんが増えてきましたね。
そんなぬいぐるみのような超小型犬、体格と比例して骨もとっても細く、骨折しやすいんです。
特に骨折しやすいのが、前腕(肘から手首まで)の骨(橈骨・尺骨)です。小柄な子だと、骨の厚さはアイスの棒くらいです。なので、ちょっとした高さから飛び降りただけで骨折してしまう事もあります。
トイプードルやポメラニアンなど小型犬の橈骨は骨折しやすいのに、外科手術をしても癒合不全や骨萎縮などの合併症が起きやすくとても厄介です。
今回の症例も、体重は1キロ台のポメラニアンです。
レントゲン検査では、右腕の橈骨と尺骨が折れているのがわかります。
ここまで完全に折れている場合は何かしらの外科手術が必要になります。
今回の骨折にはプレートを使用した外科手術を選択しました。
従来のプレートを使用した手術方法は、プレートを骨に圧着させて固定していましたが、そうすることで骨への栄養供給が少なくなったり、骨が痩せていくなどの合併症が一定の確率で起きます。
今回の症例で使用した、Synthes社のロッキングプレートはプレートにスクリューをロっキングさせて骨と固定をするため、従来の方法に比べて骨への負担が少なく合併症の確率が格段に減少しました。
橈骨・尺骨骨折整復手術
整形外科の手術では、感染には特に気を付けます。
また術前のレントゲン検査から予想していた骨折と、手術中に直接骨折している骨を目視してみると術前の予想と違う場合もあります。そのため、様々な骨折パターンを想定して事前に器具や道具を準備しておきます。
今回はこのように、プレートとスクリューを固定して手術を行いました。
術後3ヶ月で骨折が治癒したので、スクリューの本数を減らし今回の手術は終了としました。
まとめ
飼い主さんの中には『わざわざ手術などせずにギブス固定で治るのでは?』と思う方が多いです。
人での亀裂骨折はギブス固定などを行いますが、動物は今回のように完全骨折が多いです。その為、原則的に手術が必要になります。
トイプードル・チワワ・ポメラニアンなどの小型犬は落下事故や、飼い主さんが誤って踏んでしまう事などで容易に橈骨・尺骨の骨折を起こす可能性があります。
小型犬の橈骨は骨折すると、たとえ正しく外科手術で整復をしても癒合不全や骨萎縮などの合併症が起きやすくとても厄介です。
高い所に上れないような工夫をしたり、抱っこで受け渡す時は低い位置で行う、両手でしっかり抱きかかえるなど、日ごろから十分に気を付けてあげて下さい。
獣医師:林 敬明
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