林動物病院

〒411-0816 静岡県三島市梅名97-5

# 5 : 猫の脾臓全摘出術 / 【脾臓の腫瘍】組織球肉腫 

【脾臓の摘出】

脾臓という臓器は胃の尾側にあります。

脾臓の働き:①免疫の調整 ②血液の再生 ③血液の貯蔵 ④造血などの大切な役割を担っています。

そんな脾臓を取っても大丈夫? と思う方も多いですが、結論から言うと脾臓の摘出を行ってもほとんどの場合は問題なく生活出来ます。

 

今回は猫(6歳の避妊済みの雑種)の脾臓にできた腫瘍の話です。

1か月前から徐々に食欲が落ちて、最近は元気もないとの事で来院されました。

血液検査では中等度の貧血と血小板の減少があり、エコー検査を行ったところ、脾臓に腫瘤(赤丸)が認められました。

 

 

飼い主さんと話し合った結果、外科手術で脾臓の全摘出手術を行う事になりました。

 

脾臓の摘出手術

開腹すると、異常な脾臓(黄色枠内)が目視されます。

脾臓を体外に出して確認します。正常な脾臓の表面は滑らかですが、今回の脾臓は表面がボコボコと凹凸があり明らかに異常です。

脾臓の摘出に、新世代超音波エネルギーデバイスのソニックビートを使用します。

5mmまでの血管の切開と安定した止血が可能です。

脾臓の摘出では特にその効力を発揮します。一般の脾臓の摘出手術に比べ格段に速く、そして安全に摘出できます。

 

ソニックビートで脾臓を摘出していきます。猫の場合、膵臓の左葉がすぐ近くに並走するため慎重に扱わなくてはいけません。

 

摘出した脾臓です。

 

病理検査の結果、悪性腫瘍の組織球肉腫でした。

猫では珍しい腫瘍で、症例数と治験例が少ないのが現状です。

現時点で有効な治療法は報告されていませんが、ロムスチンという抗がん剤が使用される事が多いです。


まとめ

脾臓に出来る癌は進行が速い事が多く、症状が出ている場合では、かなり進行している事があります。

早期発見の為にも定期的な検査(動物ドック)等が勧められます。

 

 

 

 

獣医師:林 敬明