# 6 : 犬の断脚術 / 【後肢の巨大腫瘍】軟部組織肉腫
【断脚】と聞くと、痛そう・可哀そう・酷いと思う人は多いと思います。
しかし、断脚手術を行う理由は今ある痛みからの解放です。
交通事故などの怪我により壊死をしてしまい断脚を行う場合もありますが、やはり1番多いのは悪性腫瘍【ガン】です。
今回の症例も後肢の腫瘍により、断脚手術を行いました。
診察時は足を挙上し、痛みがありましたが、手術をしたその日には3本足でしっかり立っていました。
手術の次の日に、飼い主さんが面会に来られた際には、3本足で上手に走っていて、飼い主さんを驚かしていました。
断脚手術を選択するのは最終的には飼い主さんです。その決断ははとても辛い事ですが、術後に痛みがなくなり、元気に歩いたり、走ったりする姿を見ると、断脚手術を選択して良かったと思ってもらえます。
今回の症例の話をしていきます。
14歳の去勢済みのチワワです。
先述の通り、右後肢を痛がっているとの事で来院されました。
触診で右大腿部に明らかな腫れを触知できます。
その時のレントゲン検査が下記です。
右大腿部の腫瘍は赤丸の部位になります。反対の左足に比べて太さが違うのが一目瞭然です。
右後肢の痛みが強く、飼い主さんと話した結果、断脚手術を行う事になりました。
外科手術による断脚手術
後肢の断脚手術は股関節を外して離断します。今回の腫瘍は足の付け根まであるので、可能な限り足の付け根から切除を行っていきます。
まずは、内側からアプローチしていきます。鼠径部の太い血管(黄丸)は結紮離断します。
筋肉を切断していきます。大腿骨頭の靭帯を切断し、股関節を外します。(青丸)
股関節を外したら、次は外側からアプローチをしていきます。神経には局所麻酔を注入してから切断します。
後肢の切断が終了したところです。
術後の疼痛管理として、持続性癌疼痛治療楽のテープ(青丸)を皮膚に貼ります。
切断した後肢です。病理検査の結果は悪性腫瘍の軟部組織肉腫でした。腫瘍は切除されていましたが、マージンが狭いので、今後も要注意です。
術後1年後の写真です。
抗がん剤などの治療はしていませんが、術後1年以上経過しても、今現在、再発は認められていません。
飼い主さんから、食欲・元気があり、3本足で走っていると聞くと、本当に嬉しい気持ちになります。
まとめ
『断脚』という言葉を選択肢として告げられると、とてもショックを受けると思います。
もちろん断脚以外の治療で治癒し、動物が快適に過ごせるならそれに越したことはありません。
しかし、断脚手術をする理由は今ある痛みを取り除いてあげる事です。動物にとって快適になり、後肢の場合では今回の症例のようにすぐに3本足で歩けるようになりますよ。
獣医師:林 敬明
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