# 9 : モルモットの卵巣嚢胞(嚢腫)摘出術 / 【お腹の膨れや脱毛に注意】
今回はモルモットちゃんの卵巣嚢胞(嚢腫)についてお話します。
卵巣嚢胞
卵巣嚢胞とは、卵巣に嚢胞ができて一般的に透明な液体が貯留した状態です。
雌では発生率が高い疾患です。
症状
初期症状はほとんどが無症状です。
卵巣嚢胞のサイズが大きくなると腹部膨満がみられますが、モルモットちゃんは元からお腹が膨らんでみえる子もいるので気づくのが遅れる事もあります。
その他の症状として食欲不振、衰弱、沈鬱が認められることもあります。また卵巣嚢胞は子宮疾患と併発していることもあり、外陰部からの血様分泌物が認められたり、痒みを伴わない両側性の対称性脱毛がみられる事もあります。
今回の症例
3歳のモルモットちゃんです。主訴は1~2カ月前から背中の毛が薄くなってきたとの事で来院されました。
触診で腹部の両サイドに膨らみがあります。
エコー検査を実施したところ卵巣に嚢胞が認められました。
治療は飼い主さんと相談して、内科治療で経過を追っていくことにしました。
定期的なエコー検査で嚢胞の腫大は進行しているものの食欲と元気はありました。しかし初診から3カ月経過したところで食欲の減少が認められた為、手術を行う事になりました。
手術前 の卵巣嚢腫(左側の卵巣嚢胞は黄丸、右側の卵巣嚢胞は赤丸)のエコー写真です。
黒く見えている所が液体が貯留している状態です。
外科手術による卵巣嚢胞摘出手術
食欲不振の状態での麻酔なのでリスクはあります。
また、犬や猫とは違った麻酔のコントロールなので、いつも以上に慎重に麻酔管理をしていきます。
開腹すると、腫大した左側の卵巣(黄矢印)が認められます。
卵巣嚢胞を体外に出した状態です。
子宮と間膜の間の多数の血管を新世代超音波エネルギーデバイスのソニックビートでシーリングしながら切開していきます。
摘出した卵巣嚢胞と子宮です。
小さい体で無事に手術を乗り越えてくれました。しかし、まだまだ安心は出来ません。モルモットちゃんはストレスに弱い動物です。退院後は飼い主さんの協力も必要です。飼い主さんには頑張って投薬してもらい、飼育環境も衛生的に保ってもらいます。
幸いこの子は術後に食欲も戻り、抜糸時にはとても元気な姿で来院してくれました。
まとめ
卵巣嚢胞についてははっきりとした原因はわかっていませんが、ホルモン異常が関係していると言われています。メスのモルモットちゃんには起こりやすい病気です。いつもと違う様子(腹部膨満、外陰部からの血様分泌物、脱毛など)が見られたら早めに受診して下さい。治療はホルモン療法がいくつか報告されていますが、卵巣・子宮摘出手術が一般的です。
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