# 98 : 犬の総胆管切開術 / 【胆石による完全な総胆管閉塞】
14歳のMix犬が食欲不振と嘔吐を主訴に来院されました。
検査所見と診断
血液検査と超音波検査に胆嚢炎および総胆管閉塞が疑われました。
内科的治療だけでは改善が難しいと判断し、外科手術を行うこととしました。
胆嚢摘出手術・十二指腸切開術・総胆管切開術
まず胆嚢摘出術を実施し、胆嚢管(黄丸)からの総胆管洗浄を試みましたが、閉塞していた総胆管内の胆石は動きませんでした。
次に十二指腸を切開し、十二指腸乳頭からの洗浄(白丸)を行いましたが、依然として胆石は排出されませんでした。
さらに十二指腸乳頭部を慎重に切開し、総胆管内の石を摘出しようと試みましたが、胆石は動きませんでした。
最終的に、胆石が存在する直上の総胆管を切開し、直接胆石(青丸)を摘出する方法を選択しました。
切開した総胆管を細い吸収糸で縫合(黄丸)した写真です。
摘出した胆石と胆嚢の写真はこちらです。摘出した胆嚢を切開したところ、内部からは悪臭を伴う内容物が確認され、培養検査の結果、原因菌として大腸菌(E. coli)が検出されました。
術後経過
手術前に高値を示していた黄疸(総ビリルビン値)は術後速やかに改善。経過は良好で、食欲も元通りに回復し、元気な姿で無事に退院されました。
まとめ
本症例では、なるべく避けたい手技である「総胆管切開」を最終的に選択する必要がありました。総胆管は非常に繊細な構造であり、切開には術後合併症のリスクが伴う可能性があります。
しかしながら、本症例では複数のアプローチを試みても胆石が動かず、閉塞を解除しなければ命に関わる状況だったため、やむを得ず総胆管を切開し直接胆石を摘出しました。
結果的に、今回の手術では合併症もなく無事に回復してくれました。重症例ではありましたが、適切な処置を選択できたことで良い経過が得られ、本当に嬉しく思います。
胆嚢疾患は進行するまで症状が出にくく、気付いたときには重症化しているケースもあります。早期発見・早期治療の重要性を改めて実感した症例でした。
獣医師:林 敬明
この内容は2025年月6時点の情報です。
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