# 8 : 猫の腸切除術 / 病理の結果は腸腺癌と肥満細胞腫
2日続けて猫の腸管腫瘍の摘出手術がありました。
初日の手術は前回投稿した(# 7 : 猫の腸切除術 / 【高齢猫の下痢・嘔吐】消化器型リンパ腫 )です。今回は2日目の手術の話をします。
前回の投稿にも書きましたが、腫瘍には良性の腫瘍と悪性の腫瘍があり、悪性は『癌』と呼ばれます。
猫の腸管に発生する悪性腫瘍は、リンパ腫が最も多く、2番目に腺癌、そして肥満細胞腫と続き、稀に平滑筋腫、平滑筋肉腫、GISTなどの可能性もあります。
症状は慢性的な下痢や嘔吐、食欲不振、便秘、元気消失、体重減少などです。
今回の症例
11歳の去勢済の猫です。嘔吐と食欲不振を主訴に来院されました。
腹部の触診で異常はありません。検査で膵炎が認められた為、膵炎の治療を開始しました。
1週間後の再診時では、吐く回数は減ったものの、まだ嘔吐が続いていました。そして体重の減少も認められました。
腹部のエコー検査を行ったところ、小腸に腫瘤(赤丸)が見つかりました。
外科手術による小腸腫瘍切除術
開腹してみると、やはり小腸に腫瘤(紺丸)が認められます。
腫瘤を切除して腸を断端吻合(白丸)しました。
病理検査の結果、腫瘤(赤丸)は腸腺癌でした。
小腸腺癌は、無治療での生存期間は約2週間と報告されています。
しかし、今回の病理検査の結果は腸腺癌だけではありませんでした。腸の断端(青矢印)に肥満細胞腫も形成されていました。
猫の肥満細胞腫は皮膚に発生する『皮膚型』と、腸・肝臓・脾臓などに発生する『内臓型』に分けられます。皮膚型に比べ内臓型は悪性度が高く、転移しやすいです。
術前のエコー検査では、肝臓と脾臓に病変部は認められませんでしたが、今後も注意が必要です。
治療は飼い主さんと相談した結果、静脈内の抗がん剤は使用せずに、分子標的薬とステロイドで治療する事にしました。
外科手術と内服薬の治療の結果、嘔吐がなくなり、食欲と元気が戻りました。
4.9キロまで減少した体重も、健康時と同じ6.1キロまで増えてくれました。
【追伸】抗がん剤、ステロイド剤、ホモトキシーの治療で、外科手術から1年以上経過していますが、小康状態を維持してくれています。
まとめ
猫ちゃんは毛玉などを吐きやすい動物ですが、今まで以上に嘔吐の回数が増えたり、嘔吐に伴って食欲不振、体重減少、下痢や便秘などの症状がみられる場合は病気が潜んでいる可能性があります。猫ちゃんの体調の変化に一番最初に気付いてあげれる人は飼い主さんです。いつもの嘔吐と何か違うなと感じたら一度受診してあげて下さい。
獣医師:林 敬明
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