林動物病院

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夏の散歩に潜む危険 ― SFTSはもう“他人事”ではありません

2025年07月08日

暑さが本格的になり、ワンちゃんとのお散歩も汗ばむ季節となりました。同時に、ノミ・マダニが最も活発になる時期でもあります。「うちの子にはノミやマダニがついているのを見たことがないから大丈夫」「室内飼いだから安心」と思っていませんか?

実は、ノミやマダニは人の衣服や荷物などについて家の中に入り込み、カーペットや家具の隙間などに身を潜めて寄生することがあります。特に現代の住環境は気温・湿度が一定に保たれているため、ノミは13℃以上、マダニは15℃以上で繁殖・活動が可能で、一年を通じて油断できません。夏はまさに繁殖・活動のピークです。

ノミやマダニの寄生によって、ワンちゃんがかゆみを感じるだけでなく、ノミアレルギー性皮膚炎や瓜実条虫症といった疾患を引き起こすことがあります。さらにマダニが媒介する病気には、SFTS(重症熱性血小板減少症候群)、ライム病、バベシア症などがあり、これらは命にかかわる重大な感染症です。人にも感染する可能性があるため、ワンちゃんだけでなく、ご家族の健康にも影響を及ぼす恐れがあります。

特にSFTSは注意が必要で、犬での致死率は約25%、猫では50~70%、人では27~30%との報告があります。しかも、マダニからだけでなく、SFTSに感染した犬や猫から人へ、さらには人から人へと感染する可能性があることが知られています。最近では、実際に獣医師がSFTSに感染し亡くなったケースも報告されています

この夏、愛犬と楽しく安全に過ごすためにも、ノミ・マダニの予防対策はとても大切です。「見たことがないから大丈夫」ではなく、「見えないうちから守る」ことが、ワンちゃんとご家族の健康を守る第一歩です。