林動物病院

〒411-0802 静岡県三島市東大場2-2-19

# 44 : 犬の胆嚢摘出術 / 【胆嚢壊死の緊急手術】

実施する機会の多い胆嚢摘出手術ですが、今までにこの【症例紹介】で5回ほど紹介させて頂きました。

同じ胆嚢摘出でも、それぞれ違うシチュエーションの話をしてきました。

①胆嚢粘液嚢腫の説明  (# 1 : 犬の胆嚢摘出術 / 【破裂したら緊急事態!】犬の胆嚢粘液嚢腫)

②胆嚢粘液嚢腫の症例  (# 13 : 犬の胆嚢・脾臓 摘出術 / 【胆嚢粘液嚢腫】術前検査でアジソン病が見つかった症例)

③総胆管に胆石が詰まった症例  (# 15 : 犬の胆嚢摘出手術・十二指腸切開術 / 【黄疸】胆石による総胆管閉塞)

④胆嚢が破裂して、肝臓と癒着した症例  (# 16 : 胆嚢摘出手術・肝葉切除術 / 【夜間緊急手術】破裂した胆嚢粘液嚢腫)

⑤巨大な総胆管胆石の症例 (# 38 : 犬の総胆管結石摘出手術 / 【胆嚢摘出手術】+【胃切開】)

 

今回紹介する症例は胆嚢が壊死を起こしていて、結果的にとても緊急性が高かったと思われる症例です。

患者は17歳のMix犬です。(当院で胆嚢疾患で緊急手術を行う患者さんの年齢は14~17歳が多いイメージがあります。)

前日の午後から急な食欲不振と頻回の嘔吐を主訴に来院されました。

血液検査では肝臓のALTが 2502 (基準値10-125) 胆道系のALKP 6907(23-212)、GGT 89 (0-11)   黄疸の検査のT-Bilは 5.4(0-0.9) 、 急性炎症のマーカーのCRPは 31.6(0-1.0)とどれもとても高値でした。

エコー検査では胆嚢壊死を疑う像を認めたため、この日に手術を行う事にしました。

 

胆嚢摘出手術

本来なら、胆嚢の膜を剥がしながら肝臓と剥離していくのですが、今回の胆嚢は壊死を起こしていて胆嚢の膜にわずかに刺激を与えただけで破けてしまったので、肝臓から直接胆嚢を剥がしていく事にしました。

胆嚢管と総胆管には詰まりはない事を確認してまず胆嚢を切除し、胆嚢管からカテーテルを挿入して生理食塩水で総胆管の洗浄を行いました。

摘出した胆嚢とその中身です。

しかし術後の血液検査の数値と状態が芳しくありません。

術後、一番数値が悪い時でALKPは10000を超え、GGTが209、T-Bil9.1 がまで上昇しました。また嘔吐も継続しました。

その後、治療に反応してくれて、徐々に数値と症状が改善され無事に退院してくれました。

抜糸時にはとても元気な姿で来院してくれました。黄疸は消失していて、食欲と元気は病気をする前と変わらないとの事でした。

 

まとめ

今年から予約診療システムを導入し、看護師さんの人数も増えたので、手術時間を以前より確保する事が出来ています。この日は整形外科の手術もありましたが、その手術後に今回の胆嚢摘出手術も昼の手術時間に行う事が出来ました。

この症例は昼に手術を行えない場合、夜に手術をする予定でしたが、夜に手術を行っていたら手遅れになっていた可能性があり、とても緊急性が高い症例だったと思っています。

今回は17歳という高齢でありながら、外科手術に耐え、その後の内科治療にも反応してくれて、本当にこの子の生命力に助けられました。

 

 

獣医師:林 敬明